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岡山地方裁判所 昭和47年(行ウ)9号 判決

原告 三沢久直

被告 岡山税務署長

訴訟代理人 清水利夫 外五名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し昭和四六年八月三一日付をもつて原告の相続税についてなした取得財産価額八、六九七、〇八一円(課税価額八、六九七、〇〇〇円)、相続税額四四八、一一〇円、過少申告加算税一八、七〇〇円とする更正および賦課処分(ただし、相続税額四〇五、五五二円、過少申告加算税一六、五〇〇円を超える部分を除く。)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張〈省略〉

第三証拠〈省略〉

理由

一  請求原因1の事実、同2の(一)の事実は、当事者間に争いがない。

二  〈証拠省略〉、弁論の全趣旨によると、本件換地予定地指定は、訴外亡三沢武一所有の従前の土地岡山市大供一九二番地の一宅地一五〇・八〇坪、同所一九〇番地の一五田一畝二七歩の二筆に対して換地予定地一箇所一五九坪を指定し、かつ、その効力発生の日を通知を受けた日の翌日としたこと、亡武一が右通知を受けたのは、昭和二五年七月二四日頃であつたこと、亡武一が昭和三八年右換地予定地の一部三〇坪を他に譲渡したが、公簿上右一九二番地の一宅地一五〇・八〇坪から三九坪を譲渡したことにしたので、同土地の公簿上の面積は現在の一一一・八〇坪(三六九・五八平方メートル)となり、また、右譲渡により右換地予定地一五九坪が現在の一二九・三四坪となつたこと、そして、前記一九〇番地の一五田一畝二七歩はその後、現在の宅地五七坪(一八八・四二平方メートル)と地目が変つたことが認められ、これに反する証拠はない。

そうして、亡武一が前記換地予定地指定に基づいて、従前の土地上にあつた建物等を指定された換地予定地上に移転し、同土地を長期間現実に使用収益しており、従前の土地が既に公共用地等に供されており、亡武一ないし原告が全くこれを使用収益していないことは、当事者間に争いがない。

三  法〔編注:土地区画整理法・昭和二九年法律第一一九号〕九八条一項は、仮換地指定について、(1) 「土地の区画形質の変更若しくは公共施設の新設若しくは変更に係る工事のため必要がある場合」と、(2) 「換地計画に基き換地処分を行うため必要がある場合」との二つの場合を規定し、右(1) の仮換地指定は、換地処分を行う前に工事の必要から一時的にその仮換地の使用収益権を付与するのに過ぎないものであつて、その仮換地が、将来そのまま換地となるようなものではなく、その使用収益権も換地までに再び従前の土地に戻されるか或いは別の土地に移行することが予想されるものであるのに対し、右(2) の仮換地指定は、換地の予定地的な意味で指定する場合であることは、右同条同項の規定の趣旨から窺われるところである。

ところで、被告は、本件の換地予定地指定処分は右(2) の場合にあたるから、その換地予定地に即して本件土地の課税価額を評価すべきであると主張するのに対し、原告は右処分は右(1) のいわば例外的な場合にあたるから、従前の土地に即して本件土地の課税価額を評価すべきであると主張するので、まず右処分が右(1) と(2) とのいずれの場合にあたるかについてみるに、〈証拠省略〉によれば、本件換地予定指定に際し、換地計画に相当するものとして換地設計書が作成されていたこと、本件区画整理事業における換地予定地は、将来本換地となることを前提とし、工事の必要からの一時的な換地予定指定処分は行われておらず、既に周辺の換地予定地にはそれぞれ恒久的な建物が建築されて長期間使用収益されて来ており、現在の換地予定地以外に本換地指定をされる見込みの全くないこと、亡武一も本件換地予定地上に、前記のとおり従前の土地から建物(住家)を移転させたほか、アパートを新築し、亡武一の生前、既に従前の土地は市役所敷地、公共用道路、同所に換地予定地指定を受けた者が現に使用収益する宅地となつていたことが認められ、これに反する証拠はなく、右事実によれば、被告主張のとおり本件換地予定地指定が前記(2) の場合にあたるものであつて、原告のいう例外的な前記(1) の場合にあたらないことが明らかである。

そして、施行法〔編注:土地区画整理法施行法昭和二九年法律第一二〇号〕六条により、旧特別都計法一三条の規定に基づく本件換地予定地は、法九八条一項の指定のあつた仮換地となるというべきであつて、原告が主張し、かつ、本人尋問においていう法律上の見解中、以上の結論に反する部分は、すべて独自のものであつて、採用の限りでない。

以上の次第であるから、そもそも、従前の土地は既に市役所敷地、道路等となり亡武一が使用収益していた当時の状況を全くとどめていないため、原告のいうように従前の土地を評価すること自体が実情にそぐわないのであつて、原告が将来換地処分によつて本件換地予定地を換地として取得することについて疑いをさしはさむ余地もない本件の場合、亡武一が本件土地の所有権者として現実に経済的利益を享受していた本件換地予定地(仮換地)の評価額をもつて本件相続税の課税価額とするのは相当であると解せられ、この点、被告には何ら違法の点がない。

四  〈証拠省略〉によれば、広島国税局作成の昭和四四年分財産評価基準〉〈証拠省略〉および同年分岡山税務署管内分路線価設定地域図〈証拠省略〉は、いずれも合理的根拠に基づいて作成されたものと認められ、これに反する証拠はない。

そして、〈証拠省略〉によれば、右財産評価基準および路線価設定地域図に基づく本件換地予定地(仮換地)の評価額ないしこれによる本件相続税額および過少申告加算税額が別表(二)ないし(六)〈省略〉のとおりであることが認められ、これに反する証拠はない。

五  よつて、本件更正および賦課処分(ただし、異議決定により一部取り消された部分を除く。)の取消しを求める原告の本訴請求は理由がないものとして棄却すべく、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 平田孝 米沢敏雄 鈴木敏之)

別表(一)ないし(六)〈省略〉

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